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京都家庭裁判所 昭和50年(家)2566号 審判 1975年12月01日

後見人 村田俊男(仮名)

被後見人 村田清司(仮名)

主文

後見人奥田武雄を解任する。

理由

職権を以つて調査するに、後見人は昭和四六年一一月二日被後見人およびその兄村田敏政(昭和二八年一二月四日生)の両人のための後見人に選任されたものなるところ、当庁昭和四九年(家)第一七七号、同第一七八号後見監督処分事件一件記録、調査官尾崎澄子の調査報告書によれば、後見人につき、つぎの諸事実が認められる。

(1)  昭和四八年一月二九日付、同年一二月二〇日付で村田敏政の株式会社○○銀行に対する定期預金債権額面二〇〇万円、同債権額面一〇〇万円を、同年三月二二日付、同年七月一七日付で、被後見人の前同銀行に対する定期預金債権額面各二〇〇万円を、夫々ほしいままに後見監督人又は特別代理人によることなく、自己の同銀行に対する債務元本約六六〇万円の根担保に差入れ、当裁判所より後見監督処分として、昭和四九年五月一五日右各担保を同年七月二〇日までに解除することを命ぜられながら、遂時不確かな金融対策を示して、右解除の約束をのばし、現在に至るも未だに解除していない。

(2)  就任以来財産目録作成義務を履行せず、当庁昭和四六年(家)第二三一九号、同第二三二〇号後見監督処分における前記調査官の再三の注意、警告に拘らず被後見人らのための支出状況が放漫で、その作成にかかる出納帳の記載も社撰を極め、昭和四九年一月現在で被後見人両名の総資産から、両名のための後見人による総支出を差引いた残額のうちに使途不明金が前記調査官の計算によれば約三〇〇万生じており、これにつき前項監督命令により、使途内容を明らかにすることを命ぜられ乍ら、未だ判然となしえず、その後提出の出納帳記載にも敏政より二重支出記載等疑問点が指摘される程の正確性に疑問がある。

(3)  昭和五〇年八月以来被後見人の生活の維持、身上監護も放棄し、被後見人敏政とも感情、意思の疎通を欠くに至つているのみならず、敏政は被後見人のために後見人を解任し、自ら交替する意向を持つに至つている。

以上の事実関係によれば、後見人に後見の任務に適しない事由あるときに当るというべきである。よつて、民法八四五条、家事審判規則八六条、七六条により、主文のとおり審判する。

(家事審判官 杉本昭一)

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